杭頭補強筋について 施工手順、配置(納まり)の説明

1995年に発生した兵庫県南部地震は、建物の崩壊による甚大な被害を及ぼしました。

この大震災以降、建物の設計基準が大幅に再検討され、杭基礎についてもレベル2(想定の範囲を超える地震)地震に対応できるような耐震基準が設定されています。

建築研究所 このような災害を二度と繰り返さないために 新耐震設計基準の効果

杭頭補強筋も地震発生時応力に建物が倒壊しないための非常に重要な部材の1つですが、ハイベースや柱、梁などの複数の部材が複雑に絡み合うため、綿密な検討が重要になります。

実際に施工する鉄筋工事業者は、施工効率性を最も重要視します。

ゼネコン側はCADで図を書いて検討し、理論上可能であろう配筋方法を検討しますが、施工効率性が悪いために余計な人工が発生し、結局工程が遅れてしまうケースも多々あります。

この記事では杭頭補強筋の納まりの検討について記載します。

杭基礎について

基礎は荷重を伝達するべき地盤が浅い箇所にあるかor深い箇所かによって構造形式が変わり、杭基礎は「深い基礎」に分類されます。

杭基礎は支持地盤が深い場合に採用されます。


コトバンク 杭 

杭は大きく2種類あり、支持杭と摩擦杭に分けられます。

支持杭は先端を支持地盤に到達させ、主として杭の先端に上向きに働く先端支持力によって荷重を支えます。

摩擦杭は先端を支持層まで到達させず、主として杭の側面と地盤との間に働く周面摩擦力によって荷重を支えます。

杭頭からかぶりをとる

杭の上部に組み立てるベース筋は、捨てコンの位置からかぶりをとるのではなく、杭頭からかぶり70mmをとった位置に取り付けます。

ベース下のフカシ筋がつくこともある

杭頭の長さは捨てコンから100mmとることが一般的ですが、杭頭が100mmよりも長い場合はベースの下にフカシ筋が設置されることもあります。

図のように杭頭が200mmの場合は高さが270mmの「ウマ(段取り筋)」を使ってベース筋を組み立てます。

杭頭の施工手順と部材の説明

杭基礎について理解したところで、次は杭頭の施工手順と部材を見ていきましょう。

杭頭補強筋の設置から梁の鉄筋工事までの施工は以下のように進みます。

上記の作業で重要なことは、施工管理側のゼネコンの墨出作業がしっかりされているかどうかです。

上記の特に3~5の作業の前日に墨がしっかり出ているかどうかを第一に確認しましょう。

正確な測量作業が大前提

図面上ではX軸とY軸が明記されているので、CADで簡単に杭頭補強筋の位置を1mmもずれずに検討することができますが、実際の工事現場ではトータルステーションを用いた測量作業が不可欠になります。

測量がしっかりされないと、杭頭補強筋の設置位置がずれこむので、せっかくCADで詳細に検討したとしても梁の主筋やハイベースの定着板に干渉してしまう事になります。

杭頭補強筋

まずは、杭頭補強筋について基本的な説明をします。

杭頭補強筋は軸方向応力と曲げモーメントに対する抵抗

日本は地震が多発する地震国であり、地震時は杭頭に大きな断面力(軸力や曲げモーメント)が発生します。

杭頭補強筋の役割は「発生した断面力を上部の基礎構造に伝達すること」であり、発生した応力はベースや柱、梁などの上部の構造に伝達されます。

発生した応力を用いて、できるだけ構造を単純化し、地震時に建物が倒壊しないかどうかの評価(単純梁モデルなど)をしていきます。

フレア溶接で杭頭に溶接する

フレアグループ溶接は、重ね継手で重ね合わせる長さの確保が難しい場合や、鋼管杭の頭部に配置する基礎との接合筋に多く用いられています。

定着長さは40dを確保する

杭頭補強筋の定着長さは40dを確保しましょう。

ハイベース

露出型固定柱脚工法のパイオニアとしてさらなる革新「ハイベースNEO」より

ハイベースは、基礎部分に埋め込むアンカーボルトと、建物の鋼管柱に溶接するベースプレートで構成されています。

鉄骨造の建物の場合、上部構造の鉄骨は基礎構造に埋め込まれたハイベースに固定されます。

アンカーフレーム


アンカーフレームはハイベースの土台となる設置用架台であり、ハイベースとアンカーフレームは定着板で溶接され、一体化します。

梁の主筋

梁の鉄筋は全部で8種類あります。上主筋、上宙吊筋、下宙吊筋、下主筋、あばら筋(スターラップ)、腹筋、中子、巾止筋の8つです。

このうち、上主筋、上宙吊筋、下宙吊筋、下主筋が主筋と呼ばれています。

杭頭補強筋の配置(納まり)の検討

上記で説明したように、杭頭の施工では多種類の部材が複雑に組み立てられます。

その為、あらかじめ複数の部材が互いに干渉し合わないか検討することが必須になります。

良くある具体例を見ていきましょう。

ベース筋がアンカーフレームと干渉していないか?

前述したように、ベース筋は杭頭から70mmのかぶりをとった位置に設置されます。

鉄筋工事業者は捨てコンから杭頭高さ+70mmの高さのウマ(段取り筋)を作ってベース筋を組み立てます。

注意しなければならないのは、アンカーフレームがベース筋の高さに設置されてしまうと、ベース筋の高さが変わり、柱筋の高さが変わってしまう事です。

この場合、アンカーフレームの上端にベース筋を乗せる事しかできない為、修正が必要になってしまいます。

杭頭補強筋がハイベースと干渉していないか? 曲げる場合は角度に注意

上記のように重要な役割を持っている杭頭補強筋ですが、ハイベースの部材や梁の主筋と干渉してしまう事が多いため、施工する際はとても厄介な存在です。

図中の赤い丸が杭頭補強筋で、ハイベースの定着板と重なり合っています。

このままでは、杭頭補強筋を適切に配置することができない為、杭頭補強筋を曲げ加工したり、ハイベースのアンカーボルトを変更したり、構造を再度検討する必要が出てきます。

開先付き異形棒鋼 NewJ-BAR溶接する異形棒鋼の日本標準 WSD390 WSD490、 設計マニュアル

画像は杭頭補強筋を曲げ加工した場合のものです。

曲げ加工する場合は設計マニュアルに従って角度に注意しましょう。

杭頭補強筋が梁の主筋と干渉していないか?

図中の赤い丸が杭頭補強筋、横方向に流れているグレーが梁の主筋で、ふたつが重なり合っています。

より複雑な場合だと、一方を動かすとアンカーボルトや定着板に干渉したり、かぶりが適切に取れなくなったりと頭を悩ませる時間が多くなります。

杭頭補強筋をずらせば良いのか、梁の主筋をずらすことはできるのか、そもそも設計を見直す必要があるのか、鉄筋工事業者と綿密に話し合うことが大切です。

まとめ

今回の記事では、杭頭補強筋の納まりについて記述しました。

現場を経験したり、自分の目で見て考えることがないと、なかなかイメージがつきにくいかと思います。

この記事を参考に、施工手順や具体的な配置(納まり)について工事業者と話し合ってはいかがでしょうか。

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