梁のフカシについて 構造天端の理解、具体的な施工事例を紹介

建築の世界は誤差をミリ単位で管理しています。

図面がしっかり読めなければ(特に躯体業者の場合は)大きな問題に発展してしまいます。

コンクリートの打ち直しやそれにかかわる人工を負担しなければならないからです。

図面記号はしっかり理解する必要があり、図面を読み解くことができなければ、「梁の構造天端」を理解できません。

構造天端を把握できなければ、梁のフカシについても理解できません。

この記事では、構造天端と梁のフカシについて詳しく理解していきます。

構造図ついて

まずは、図面を読み解くところから始めましょう。

構造図とは?

図面は意匠図、構造図、設備図と内容によって種類分けされています。

鉄筋工事業者などの躯体業者が使用するのは、構造図(建物の構造体を示す図面)です。

構造図には、柱・梁・壁の配置やリスト、寸法が記載されています。

構造図はS-○○といった番号で図面の右下にページ分けされています。S-18であれば、構造図の18ページ目という意味です。

基準となっている高さを読み取ろう

建築の図面は、必ず「何かを基準にして」構造物の高さを設定しています。

梁の天端はGLを基準にして、2階のフロアレベルは1FLを基準にして、、、と基準がコロコロ変わる図面は存在しません。

その図面がなにを基準に高さを設定しているのかをまず最初に把握しましょう。

梁の天端高さとは、梁せいのことではありません。基準からの梁の天端の高さを入力します。

この基準は、「1FL」を基準にするのが一般的です。

ポイント

一般的には、1FLを基準にして図面が作成されている。

基礎伏図とは?

基礎伏図とは、構造図のうち、基礎構造部材の詳細図のことを指しています。

キープランと総称することもあります。

上の図はS造基礎の基礎伏せ図の一部です。

一般的な図面には、図面記号が記載されています。

梁記号に、「1FLから梁天端までの寸法(構造天端)」と記載があります。

図の場合だと、1FLから梁天端までの寸法は1FL±0、構造天端までの寸法は1FL-250という意味です。

構造天端について

構造天端とはいったいどういう意味でしょうか?

構造図、基礎伏図について確認ができたところで、梁の構造天端について見ていきましょう。

構造天端とは基礎梁の天端のこと

構造天端とは、基礎梁の天端のことをいいます。

注意しなければならないのは、梁の上についているフカシの天端ではないということです。

ポイント

構造天端は基礎梁の天端
フカシの天端ではない

S造基礎の梁の天端は「ベースプレート(BPL)下端-50」

以下の図の場合、地中梁の天端の高さはどのようになるでしょうか?

地中梁の天端高さは「ベースプレート(BPL)下端-50」ですから、地中梁の天端の高さは「1FL-600」となります。

天端高さが一定の場合は天端高さを変更しても鉄筋数量は変わらない

地中梁に段差が一切ないような構造の場合、地中梁の天端高さを自由に設定したとしても、梁の集計鉄筋数量には差が生じません。

位置が変わるだけで、梁せいが変わることもなく、鉄筋の構造数量は不変だからです。

試しに地中梁の天端を「-600」で入力した場合と「-1200」で入力した場合の梁の鉄筋数量を比較してみます。

-600で入力した場合

-1200で入力した場合

大梁の鉄筋数量集計結果は、-600で入力した場合も、-1200で入力した場合も同じ鉄筋数量の結果になります。

梁に段差がある場合は天端高さをしっかり設定する必要がある

梁に段差がある場合は注意しなければなりません。

段差がある場合は、梁の主筋が柱や梁に定着する分、鉄筋数量が多くなるからです。

-900と-1200の段差を設けて梁の鉄筋がどのように変化するのか見てみます。

段差がない場合

-900と-1200で段差を作った場合

大梁の鉄筋数量集計結果です。定着する鉄筋が増加したため、鉄筋数量が増加しています。

ポイント

梁に段差がある(構造天端に段差がある)場合は、鉄筋数量が増減するので注意する

梁のフカシについて

構造図をしっかり読み解くことで、梁の構造天端を理解することができました。

続いて、梁のフカシについて理解していきましょう。

フカシの鉄筋は構造天端から定着長さをとろう

スラブと地中梁を構造上一体化させるには施工性上「フカシ」が発生します。

鉄筋は引張強さ以上の応力で引っ張ると伸び切れてしまいます。

鉄筋の定着長さが短い場合、鉄筋は切れる前にコンクリートから抜け出してしまいます。

鉄筋の定着力はコンクリートとの付着力、つまりコンクリートに接する面積によって決定しています。

この定着長さが不足してしまうと梁の応力を柱に伝えることができないため、耐震構造物の基礎として成立しなくなってしまいます。

地中梁であれば応力をしっかり柱に伝えることができるか、スラブであれば地震などで発生した水平力を地中梁に伝えることができるかが耐震構造物上の重要な役割になります。

フカシの鉄筋は構造体、つまり地中梁の天端を定着起点として適切な定着長さをとる必要があります。

定着長さを適切にとることでスラブと地中梁を一体化させているのです。

ポイント

フカシの鉄筋は梁の構造天端を定着起点として適切な定着長さをとる必要がある

フカシには主筋を下支えするウマが必要

写真は、S造基礎のフカシの部分の写真です。

少しわかりにくいですが、フカシの主筋を支えるウマが映っています。別の写真を見てみます。

フカシのウマは、フカシの主筋を下支えする鉄筋のことを言います。

ウマは段取り筋といったりもします。

フカシのウマの鉄筋寸法計算

フカシのウマの鉄筋の拾い方は、とても簡単です。

ポイント

ウマの高さ=増し打ち高さ-10mm
ウマの巾 =STPと同等

梁上打ち増し高さによって、ウマの形状や高さを変える

フカシのウマは、コンクリートの梁上打ち増し高さによって形状や高さを変える必要があります。

例えば、打ち増し高さが240の場合は、段取り筋の高さは230とします。

形状は、様々に工夫すると良いでしょう。

地中梁のフカシの積算例

実際に地中梁のフカシを積算してみます。

上フカシの積算

ここでは、フカシせいが250の場合を考えてみましょう。

図の35dは、梁への定着長さを表しています。

フカシに段差がある場合

実際の現場では、スラブに段差がある場合が多く、その影響で梁の上フカシの打ち増し高さにも差が生じます。

積算ソフト「鉄之助」を使って、実際に拾ってみますと以下のようになります。

フカシが多種類ある場合

1つの梁に対して上フカシせいが多種類ある場合は、工夫が必要になります。

「鉄之助」の場合は、1つの梁に対してフカシを上下1種類しか入力できません。

なので、上フカシの打ち増し高さ(上フカシ天端)に差がある場合は、下フカシの欄にもう1種類を入力して対応することになります。

2種類の場合は、下フカシへの入力で対応できるのですが、3種類以上になってくると対応不可になってくるので、手作業での拾い出しが必要になってきます。

フカシが1つの梁に対して数種類ある場合は、フカシの鉄筋を相互に定着させます。

一般的には40dの長さを定着長さとして取ります。

上フカシの施工図を描いてみよう

フカシの施工図を描いてみます。

手順は、以下の通りです。

まとめ

構造図・基礎伏図の構造天端・フカシについて理解できましたか?

構造天端をきちんと把握できなければ、梁のフカシを理解することはできません。

フカシについてしっかり理解して日々の業務に活かしましょう。