段取り筋(逆配筋)について スラブの例を用いて紹介

熟練の鉄筋施工技能者は、早く正確に綺麗に配筋作業を行うことができます。

現場経験の豊富さや慣れから効率のよい施工に必要な揚重機の準備や、他業種工事との兼ね合いの相談等、熟練の技能者のスキルは非常に高く、多岐にわたります。

様々なスキルのうち、現場施工のスキル「段取り筋(だんどりきん)の使用」についてみていきましょう。

スラブとは?

段取り筋を理解する例としてスラブの段取り筋が比較的わかりやすいので、今回はスラブの施工事例を用いて説明していきます。

段取り筋の説明に入る前に、スラブの基本知識をおさえておきましょう。

基本をおさえたうえで、シングル配筋とダブル配筋を見ていきます。

シングル配筋


主筋と配力筋が一段のみの配筋をシングル配筋といいます。

スペーサーはコンクリートブロックが多い


コンクリートブロックには2種類あります。

456(しごろ)と567(ごろっち)の2種類です。

どちらを使用するかは、設計かぶり厚さを考慮して決定します。

かぶり厚さは大きく、「土に面している」or「土に面していない」かでかぶり厚さの数字が変わります。

一般的には、「土に面している」場合で、設計GLから深い箇所(ベース配筋など)には設計かぶり厚さが大きくなるので、567のコンクリートブロックを使用することが多いです。

一方、土間配筋の場合は456のコンクリートブロックを使用することが多いです。

例えば、RC造の小学校の改修工事で、一階の土間配筋を施工する場合は456のコンクリートブロックを使用します。

ダブル配筋

ダブル配筋の場合は主筋と配力筋が2段になります。

ダブル配筋は、土木工事であれば底版配筋、建築工事であれば土間配筋で一般的です。

シングル配筋であればモチアミ状でイメージしやすい為、どういう組み方になっているのかなんとなく理解できる方もいるかと思います。

面積の小さいシングル配筋であれば、経験が少ない若手の方であっても、もしかしたら正確に施工できるかもしれません。

しかし、ダブル配筋はどうでしょう?組み方を理解できる方は少ないのではないでしょうか。

シングル配筋然りダブル配筋であっても、早く正確に施工するためのコツは「段取り筋の使用」が必須になってきます。

スペーサーは上下らくらくスペーサーが主流


シングル配筋の場合はコンクリートブロックを使用しましたが、ダブル配筋の場合は別のスペーサーを使用します。

一般的なものは、上下らくらくスペーサーです。

タイガー産業株式会社 上下らくらくスペーサー

段取り筋とは?

では実際に段取り筋をどのように使用して施工するのか見ていきましょう。

段取り筋は逆配筋になる


上の画像は、デッキスラブのダブル配筋の途中の画像です。

上記の画像で段取り筋はどれかわかるでしょうか?

わかりにくいですが、上記の鉄筋は他の鉄筋と違い、上下関係が逆になっているのがわかるでしょうか。

段取り筋は、図面上では主筋と配力筋の上下関係とは異なる配筋方法になります。

その為、鉄筋業者から施工管理会社へ「逆配筋してもよいか?」と質問が出ることも多々あります。

段取り筋の上にも鉄筋を配筋することもある

設計会社が厳しいところだと、逆配筋を認めない場合もあります。

しかし、効率性を重視する鉄筋工事業者からすれば段取り筋を使用した逆配筋の方が早く正確に施工できるため、よく相談することが重要になります。

上の図のように段取り筋の上にも鉄筋を配筋してほしいと要望する場合もありますし、段取り筋のみで良いという場合もあります。

設計会社や施工管理会社の考えも様々ですので、適切に相談して施工することがポイントになります。

スラブ配筋の具体例

段取り筋を使ったスラブの配筋の具体例を見ていきましょう。

5500mmの定尺材を使うのが一般的


様々な方法がありますが、スラブの配筋には5500mmの定尺材を使用することが一般的です。

配筋の上下関係を把握し、段取り筋を設置

まず、主筋方向がどちらなのかよく確認しましょう。

方向を間違ってしまうと主筋と配力筋の上下関係が逆になってしまうので注意が必要です。

スラブを配筋する際は、上図の赤色のように5500mmの定尺材に@ピッチの印を行い、配筋していきます。

まとめ

この記事では段取り筋について説明をしました。

鉄筋工事技能者は様々な工夫をして施工効率性を高めています。

適切にコミュニケーションを取りながら工事を進めることが重要です。