【鉄筋工事】スラブ配筋の段取り作業について

建設業界では人材不足が深刻です。

鉄筋の結束や指示された通りの材料の小運搬などは非熟練者でも施工が可能なので、短期変動的な人員でも補うことができます。

非常に問題なのは、「段取り作業」ができる熟練者が不足してしまっている事です。

施工の効率化には段取り作業が不可欠であり、段取り作業ができる人材がいなければ非熟練者が何人いても現場が全く進まないという事態に陥ってしまいます。

ネット上にはスラブの説明や、定着および重ね長さを説明した記事はありますが、それらをどう組み立てるのかを説明した記事が全くありません。

この記事では、現場でのスラブ配筋作業と現場で必要な知識について詳しく解説します。

段取り作業とは?

段取り作業について確認しましょう。

熟練者と非熟練者のピラミッド構造

建設現場では鉄筋の組立作業フローをすべて理解した熟練者が指揮を執ります。

一般的な現場では熟練者と非熟練者の割合は約1:3です。

非熟練者は熟練者の指示を聞き、鉄筋の結束作業や材料の小運搬、スラブ配筋の場合であれば差し筋倒し作業等の単純作業に取り掛かります。

段取り作業の目的は非熟練者の生産性を上げること

非熟練者は作業全体を俯瞰的にとらえることができず、上記の単純作業しかできません。

熟練者の割合が多く、非熟練者に付きっきりで指導できる余裕がある場合は別ですが、多くの場合は人手不足で指導する時間がありません。

熟練技能の承継が遅れているのも人手不足が大きな原因になっています。

スラブとは?

スラブ配筋の段取り作業の説明の前に、スラブの基本知識を確認しましょう。

建物の上部構造(基礎よりも上の部分)にはいろいろな種類があります。

木質構造、鉄筋コンクリート構造(RC造)、鋼構造(S造)、鉄骨鉄筋コンクリート構造(SRC造)、れんが造、石造などです。

構造の種類によって使用材料や施工方法や構造形式は異なり、特にRC造やSRC造のように、現場で型枠を組み、コンクリートを流し込んで構造体を作る方法は、一体式構造と呼ばれています。

一体式構造の場合、床部材に発生した鉛直荷重は床、梁、柱と順々に伝達されていきます。

スラブとは、このような一体式構造において、地震発生の際にその水平力を他の主要部材(梁・柱・耐力壁)に伝搬させる構造部材を指します。

適切に構造体に定着させる

S造の基礎の場合は、一般的に梁の上にフカシが設けられます。

フカシに定着させた差し筋とスラブの鉄筋を適切な重ね継手長さを確保することで梁とスラブが一体化構造になります。

部材同士は適切に重ね継手長さを確保する

部材同士は重ね継手長さを確保しつつ組み合わせていきます。

D10であれば400mm(40d)、D13であれば520mm(40d)の重ね継手長さを確保します。

スラブに関して、短辺方向は主筋(主力)方向、長辺方向は配力方向

googleで主筋や配力筋について検索すると、「主筋とは主に曲げ応力によって生じる引張力を負担する鉄筋」や「主筋と、荷重を負担する主要な鉄筋」というようなものすごく曖昧な表現をしているサイトが多いです。

厳密な言葉の定義はたしかにそうなのかもしれませんが、この知識では現場ではまったく役に立ちません。

スラブに関しては、短辺方向を主筋(主力)方向、長辺方向を配力方向という言い方をします。

この言い方は、厳密な主筋や配力筋の定義とは異なるので注意しましょう。

ポイント

スラブに関しては、短辺方向を主筋(主力)方向、長辺方向を配力方向

熟練者が行うスラブの段取り作業

専門工事業者の作業は段取りが8割とよく言われますが、熟練者が具体的にどのような段取り作業を行っているのか見てみましょう。

5500mmの部材にチョークする

まずは使用する部材にチョークを付けます。

部材は5500mmを使用するのが一般的です。

@200ピッチなら最後のピッチは100mmになります。

チョークする鉄筋の端部を90°にきっちりそろえよう!

チョークする鉄筋は段取り筋となります。

このチョークがずれていると、配筋もずれたものになってしまいます。

例えば、本来@200であるはずなのに、チョークが@210になっているとすべての配筋が@210になってしまいます。

一見間違えようのない簡単なことのように思えますが、実際にチョークをやってみると10mmずれることがあります。

チョークがずれてしまう主な原因は、鉄筋の端部が直角に揃っていない事です。

差し金や壁に平行に配置することで正確にチョークを出しましょう。

ポイント

チョークを出す鉄筋の端部は90°に揃えないとピッチがずれてしまう

mm単位で正確にピッチを出そう

重ね継手長さはD10であれば520mm、D13であれば600mmでそろえる

600mmのピッチであれば、自分のスケールの実寸で600mmを正確にチョークすることができます。

しかしながら、500mm(200mm*2+100mmの余り)の場合、5500mmの定尺材の鉄筋の伸びを考慮する必要があります。

つまり、5500mmの定尺材は正確に5500mmではないのです。

500mmに合わせていても、実際には510mmだったり、495mmだったりします。

流通倉庫などの敷地面積が広いスラブの場合、10mm程度の小さな誤差は最終的には数十cmの誤差になってしまいます。

この誤差を防ぐために、重ね継手長さは500mmで合わせるのではなく、あえて520mmで正確に誤差なく管理するようにします。

1200mm×2400mm間隔で段取り筋を繋げる

鉄筋のチョーク、重ね継手長さの設定が決まったら、実際に段取り筋を設置していきます。

コンクリートブロックも大体1200mm間隔で設置していきます。

【どっちが先方向?】配筋の基本は短辺方向(主筋)が上、長辺方向(配力)が下

配筋の基本は主筋方向が上、配力方向が下になるように配筋をします。

まず一番最初に行うのは配力方向の段取り筋なので、主筋方向にチョークを付けた段取り筋を配置します。

ポイント

鉄筋工事では短辺方向を主筋方向、長辺方向を配力方向という言い方

配筋の基本は主筋方向が上、配力方向が下

チョークを付けた鉄筋を主筋方向に流して段取り筋を配置する

重ね継手長さの確保の仕方

実際に重ね継手長さを確保して配筋をしていきます。

重ね継手長さの確保の仕方については2通りのやり方があります。

バカ棒を使って長さを測りながら配筋

桟木に適切な長さをチョークし、その印に合わせて重ね継手長さを確保していきます。

基準となる逆方向の鉄筋を1本設置する

上記の画像は、段取り筋を設置し、主筋方向の鉄筋を配筋したものです。

少しわかりにくいですが、赤線が重ね接手長さの基準になる鉄筋です。

段取り筋以外に、重ね継手長さの基準となる鉄筋を先に配筋することですばやく配筋することが可能です。

主筋・配力筋の間配り作業、差し筋を倒す作業は非熟練者でも可能

上記の段取り作業がしっかりできていれば、非熟練者でも正確に部材を配筋することができます。

非熟練者が部材の小運搬、差し筋を倒す作業に取り掛かっている間に、熟練者は段取り作業を進めます。

まとめ

この記事では、現場でのスラブ配筋作業と現場で必要な知識について詳しく解説しました。

熟練者がどのような知識を持ち、実際にどのように作業しているのかしっかり理解しておきましょう。

スラブを綺麗に適切に配筋するには一定期間の慣れがどうしても必要です。

はじめのうちはなにもかもわからないかもしれませんが、上記の知識を反芻して少しずつ技能を身に付けて行きましょう。