【建設業界関係者とのコミュニケーション】「建設」・「建築」・「土木」の違いについて

建設業界について学ぶなら、似て非なる「建設」「建築」「土木」の違いを言えるようになっていなくてはいけません。

実際に、建設業界の経営者を相手にコミュニケーションをとる必要がある営業マンや銀行の渉外担当の方で、これらの言葉を混同している方がいらっしゃいます。

建設業界の方を相手にビジネスの話や交渉をする場合、この違いすら分からないと信用にかかわります。

この記事では、建設業界では常識の「建設」「建築」「土木」の違いについて解説していきます。

「建設」「建築」「土木」はどう違う?

では、これらの言葉の違いについて具体的に見ていきましょう。

建設は建築と土木の総称

建設とは建築と土木の総称です。

建設=建設業界と理解すると良いでしょう。

では、建築と土木の違いは何でしょうか?

建築と土木の違いは、大きく構造物の違いにあります。

建築について

建築の指す構造物は、私たちが普段目にする街中の構造物です。

具体的には、商業施設や病院などの公共施設、流通倉庫などが建築が担当する構造物です。

「街中でみる建物は建築の分野」と理解すると良いでしょう。

これらの構造物は、細かな設計が多いため、作業員と良くコミュニケーションをとることが重要です。

その為、「建築は人をコントロールする仕事」ともよく言われます。

建築とは?

街中でみる建物は建築の分野
建築の施工管理職は人をコントロールすることが重要

建築の仕事内容

一言で建築といっても、さまざまな仕事内容があります。

営業

発注者とのパイプをつくることが仕事です。発注者の要望を社内の担当者と連携して企画書や提案書を作成します。

設計

構造設計、意匠設計、設備設計に分類されます。構造設計は建物に必要な強度を計算して設計、意匠設計は建物の外観や内部構造の設計、内装デザインを行います。

設備設計は電気や機械設備の設計を行います。設計職は建築士などの資格が必要ですが、設備設計はより専門知識が要求されます。

施工管理

現場監督が主な仕事内容です。鉄筋工事や内装工事などの施工計画を作成して、現場では工程管理や品質管理を行います。そのため、深い建築の知識と技術が必要となる仕事です。

建築には以上のような仕事があり、ゼネコンだけではなく設計事務所やハウスメーカー、公務員などの就業先があります。

建築関係の資格

建築関係の資格には以下があります。

建築士

建築物の設計などを行うための資格です。

一級建築士、二級建築士、木造建築士の資格があり、どれも国家資格です。合格率は低めですが、木造建築士は比較的難易度が低いです。

インテリアコーディネーター

証明や壁紙、キッチン設備といったインテリアに関してアドバイスができる資格です。

建築士は建物の大枠を設計して、インテリアコーディネーターはさらに細かな住居空間を作り上げていきます。なお、インテリアコーディネーターは資格として存在しますが、取得せずに活動している場合もあります。

CADオペレーター

コンピューターを使って建築用図面や設計図を作成する仕事です。

建築士が作成したラフ案を詳しく、見やすくしていきます。

建築施工管理技士

現場に出向いて工事の進行の指示や監督を行う仕事です。1級と2級の資格があり、1級建築施工管理技士のほうが管理できる現場の規模が大きくなります。

以上は代表的な建築関係の資格であり、ほかにも図面や模型の作成をする建築模型製作士、工事や内装を担当する大工や左官などがあります。

土木について

土木の指す構造物は、主にダムや発電所、水門や橋など社会インフラに係る構造物です。

「インフラ関係の構造物は土木の分野」と理解すると良いでしょう。

これらの構造物は、地方での大規模な工事が多いため、重機の数で工期を試算することが多いです。

その為、「土木は機械をコントロールする仕事」ともよく言われます。

土木とは?

インフラ関係の構造物は土木の分野
土木の施工管理職は機械をコントロールすることが重要

土木の仕事内容

土木の仕事も建築と同様の職種があります。

営業、設計、測量、施工計画、安全管理などの仕事内容がありますが、工事の種類によって必要となる技能や仕事内容が変化します。

工事の事例で言うと、道路工事ならばすり減ったアスファルトを剥がしてから舗装をし直す工事、地中にある水道管などの交換作業、重機を使った掘削作業など多岐にわたる作業内容があります。

土木関係の資格

以下で土木関連の資格をいくつかご紹介します。

技術士(建設部門)

技術士は21の部門に分かれており、そのなかでも建設部門の技術士は土木工事や建設工事の管理に関わる仕事を行います。

また、技術士が在籍すると公共工事の入札で加点されるため、受注のしやすさにつながります。

土木施工管理技士

土木施工管理技士は1級と2級があり、1級は工事現場で監理技術者という責任者の仕事に就くことが可能です。

2級は主任技術者という立場で施工計画の作成や工程管理、品質確保の体制整備などの指導監督業務を行います。

コンクリート診断士

コンクリート診断士は、コンクリートの補強や補修、取り壊しなどの判断を行います。

ほとんどの公共工事ではコンクリートが使われているため、有資格者を求める企業が増えています。

測量士

測量士は工事の際の建物や土地の測量を行いますが、有資格者でなければ測量業務をおこなうことができません。

そのため、継続的な需要があり安定した職種のひとつです。

以上のほかにも、コンクリート技士、技術士補、RCCMなどの資格も土木関連のものです。

土木の測量と建築の測量は何が違う?

土木関連の資格のところに、「測量士」がありますが、建築系の仕事と、土木系の仕事の大きな違いの一つに「測量作業」があります。

建築系の施工管理職は「人を管理する」職業であるので、測量作業は、外注の「測量屋さん」が行います。

一方、土木系の施工管理職は、「機械を管理する」職業なので、測量作業を自前でやる場合がほとんどです。

土木出身の人が建築の分野に行くと「測量屋さん」がいることに驚くことがあります。

測量のポイントは自身でXY座標を設定し、距離と角度を操ること

土木構造物は、構造物の規模が大きいため、設計図にXY座標が設定されています。

この座標を用いて測量業務を行うことが一般的です。

座標を用いて測量作業(座標測定)をすることはさほど難しいことではありません。

一方で、建築系の構造物には座標が設定されていることはほとんどありません。

建築系の「測量屋さん」は、座標を使う代わりに、「自身でXY座標を設定し、距離と角度を操ること」で墨出作業を行います。

光波(トータルステーション)を巧みに操り、測量作業をマスターするには、建築系の測量屋さんのように「自分でXY座標を設定して光波を自在に操る事」がひとつの大きなゴールになります。

ポイント

土木自身の施工管理職はトータルステーションをつかうことができる
測量のポイントは自身でXY座標を設定し、距離と角度を操ること

大きな構造物はどうやって作るの?

10cmの直線をきちんと引いてくださいと言われたら皆さんはどうしますか?

よほど雑な人でなければ(世の中には雑な人が多くいますが)定規を使って線を引くのではないでしょうか?

定規があれば簡単に線を引くことができますね。

では、50mの直線をきちんと引いてくださいと言われたらどうでしょう?

図のような黄色いスチールテープで50mを引こうとする方が大半なのではないでしょうか?

では2000mの直線ではどうでしょう?

1mmの誤差も出さずに長距離の直線を引くにはスチールテープでは厳しそうですね。

土木技術者は自身で測量する

測量には「トータルステーション」「オートレベル」という道具を使います。

トータルステーションは主に角度と距離を計測する測量器具です。

オートレベルは主に高さを計測する測量器具です。

これらの測量器具は簡単に言えば「目に見えない定規」のようなものです。

建設業者はみなこのような測量器具を使ってミリ単位の誤差を管理しています。

測量について調べてみると、なんだか小難しい三角関数の式がでてきます。

小難しい計算はトータルステーション(測量機器)が行ってくれるのであまり気にしなくて良いでしょう。

土木関連のプロの方は必ず関数電卓を持っていますが、これは自分で角度などを自分で計算するためです。

ポイント

ミリ単位の誤差を管理しながら構造物作るにはトータルステーション・オートレベルを使う

https://tetsumag.com/2020/12/30/85/