【未払い賃金問題で紛争に】黒川建設事件から見る、”法人格否認の法理”

ヨーロッパ圏の建物をイメージした高級マンション『シャトーシリーズ』は、昨今“ヴィンテージマンション”と呼ばれ、大規模な修繕工事による住みやすさの向上で、一層資産価値が高まりつつあります。

そんなシャトーシリーズを建てた建設会社として知られていたのは「黒川建設(くろかわけんせつ)」

黒川建設は昭和40~50年代ごろ、東京都内の高級住宅街に同シリーズの分譲マンションを次々と建設していました。

同社が手掛けるマンションは定期的に手を加えられ、好立地&高品質なサービス・管理体制で根強い人気を誇っています。

高級住宅街にあるマンションだけあって、時代を感じさせない佇まいは、デザイナーズマンションとして多くのマニアに支持されています。

今回取り扱うのは人気高級マンションを建設した黒川建設の起こした事件です。

「未払い賃金」「退職金」問題で紛争に

「黒川建設事件(くろかわけんせつじけん)」は、親子関係にあたる会社でも子会社側に雇用されていた従業員が、退職後に未払いの賃金・退職金が支払われなかったとして、親会社側に請求した労働判例です。

子会社の所有している財産は実質的に親会社が管理しており、子会社自体も直接意のままに支配していたことなど、“法人格否認の法理”が適用されると原告側は主張。

法人格否認の法理とは…】

法人格が法の抜け穴を通るような形だけのものであったり、法人としての実態が形骸している場合、その会社・構成員が所有する法人格を否定するもの。

裁判においては法人格否認の法理が認められ、未払いの賃金と退職金が一部支払われるようになりました。

法人格否認の法理”は一部適用

親会社の実質的な支配。

グループ関係にある会社や親子会社ではこのようなケースは多いですが、あまり表沙汰にならず、裁判の一例として取り上げられることがあってもメディアで大々的に報道されていません。

この背景については日本国内の上場企業の半数以上が、家族経営を行う企業および、ファミリー企業と呼ばれるもので占めており、法律の不都合なども全て、身内同士での口裏合わせで表沙汰になり難い部分があるからです。

何より親会社が子会社に対して大きな影響を及ぼすことは親子会社では普通であり、事件として報道するにも専門性の高い知識が必要になります。

特に見られる傾向としては中小企業において、経営能力を全く持たない経営者(子)が親会社側の経営者(親)の言いなりに操作されてしまう状態だったりします。

そうなれば結果的に子会社の法人格は形骸している状況に近いと言えるかもしれません。

ただ、これらの理由だけでは法人格否認の法理が適用されず、明確に法人として機能していない具体的な根拠が必要になります。

また、今回の事件判決については一部が認容され、一部が棄却されていました。

当時件の「法人格が形骸している」旨の主張については、労働者側の視点によるものに過ぎず、裁判おいては財産の管理や事業の実態など、あらゆる観点から総合的に判断する必要があるからです。

法理のケースは2種類に分類

法人格否認の法理は大きく分けて2つの分類されます。

当時件のような裁判例において弁護士側は、法人格が「形骸化」している場合と「濫用」している場合に分けて考えていくのです。

今回取り扱っている「黒川建設事件」は“法人格が「形骸化」”しているケースになります。

【法人格の形骸化】

法人としての実態が親会社の一部門のような状態であったり、帳簿記載が不明瞭で、株主総会や取締役会が開催されない場合などが該当します。

【法人格の濫用】

会社組織を動かす者が違法かつ不当な理由で法人格を利用する場合、具体的には会社を自由に支配し、都合良く会社を利用する場合が当てはまります。

そもそも「法人格」とは何か?

事件を解説する上で出てくる「法人格(ほうじんかく)」とはそもそも何なのでしょうか。

法人格について

前提として、企業やNPO法人など、社会の繫栄を支える事業活動を行う団体に対して、法律上で与えられる権利や資格のようなものを「法人格」と呼びます。

法人格を団体が持つことで、その団体の代表者名・構成員の名前を使わずに、団体名義でさまざまな活動を行えます。

例えば、下記のようなものが挙げられるでしょう。

  • 団体用の資金を貯蓄する銀行口座の開設
  • ビルや駐車場など、土地・不動産の登記
  • 各種保険の加入
  • 商品やサービスを取引する際に行う売り買い

普段、私たちが耳にしないだけで、実際に企業や法人で活動を行っているほぼ全ての人が、法人格の恩恵に助けられているのです。

まとめ

今回は黒川建設事件のほか、普段あまり聞き慣れない“法人格”という概念についても触れました。

余談ですが、2020年12月時点で、かの『シャトーマンション』を手掛けた“黒川建設”の現在について、あまりに情報が少ないため、詳しいことは分かっていません。

黒川建設という会社は日本の各所に存在しており、当時件で取り扱っている黒川建設がどのような顛末を辿っていたのかも謎に包まれています。

残ったのは都内の高級住宅街に鎮座する人気の高級マンションという真実のみです。

近い将来、黒川建設の真実が明るみになる日は来るのでしょうか。

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