宙に浮く芸術!梼原木橋ミュージアムに使われた建築技術とは?

高知県高岡郡梼原町にある雲の上のギャラリー、木橋ミュージアム。

建築にスギの木を使い、自然に溶け込むように、そして宙に浮いたかのように見せるこの建物。

木造で作られたかのように見えますが、実はこの建物は鉄骨造を混ぜ合わせるという高度な建築技術による建物なのです。

今回はこの木橋ミュージアムの建築について解説していきます。

芸術を再現するために使用された建築技術とは

木橋ミュージアムの建築において、様々な建築技術を使用しています。

鉄骨造と木造を組み合わせる事もまたその一つで、異例の建築と話題になりました。

そして宙に浮いてるように見せる芸術性、非常に高度な技術を使用している事がわかります。

ではどういった建築技術を使用しているのでしょうか。

支える為に細かな計算を重ね続けた鉄骨構造

木橋ミュージアムでの構造で宙に浮かせるために重要な部分、それは鉄骨です。

地上部分は基礎躯体でまかなえますが、宙に浮く中央、端部は基礎躯体より鉄骨を立ち上げ、本体躯体を支えています。

スーパーストラクチャー構造で施工すると支えの柱が大きくなり目立ってしまい、自然と統一が難しくなる。

そこで、鉄骨を一番負荷がかかる重心を計算し、その部分へ設置する事でなるべく小さい鉄骨を採用する事が可能になりました。

構造計算、そして基礎躯体の高精度による高度な施工技術による業物ともいえる鉄骨構造ともいえます。

古くから存在する建築技術、刎橋とは

木橋ミュージアムの建築では地上部分を基礎躯体だけではなく更に安定性を求める為、刎橋構造と呼ばれる工法を使用しています。

この工法は江戸時代より存在し、岸の岩盤に穴をあけ、刎ね木と呼ばれる部材を斜めに差込む事により、中空に突き出させるといった工法です。

突き出した刎ね木の上に新たに刎ね木を突き出し、下の刎ね木に支えさせ、その支えを受けた分、上の刎ね木は下のものより少しだけ長く出していきます。

これを何本も重ね、中空に向けて遠く刎ねだし上部構造を組み上げ、板を敷き橋にしていく、これが刎橋構造です。

この工法を利用し、地上側で同じように刎ね木を使用し構造に組み込む事で更なる安定感を保つ事が可能となります。

新たな架構技術、やじろべえ型刎橋と呼ばれる木造建築技術

先ほど説明した刎橋構造は両端に刎ねだしを作る事で更なる強度を発揮する事が出来ます。

ですが、木橋ミュージアムでは片側しか地上部分が無いため、半分ほどの効果しか発揮する事ができません。

そこで、中央部分の鉄骨柱よ刎ね木を十字の形で桁を重ねていくという新たな工法を生み出しました。

それがやじろべえ型刎橋です。

この工法により、刎ね木を重ね、両幅へ広げていくように重ねていくことで、負荷を分散させ、柱への負担を下げる事で耐久度を更に向上させる事が可能となりました。

こうして芸術性をしっかりと残し、無事に建築を行う事が出来ました。

地域文化の活性化を狙った設計

建築には難がありましたが、この建築物、木橋ミュージアムの建築には様々な意味、可能性が秘められています。

それは、地域文化の活性化、そして尊重となるシンボルを目指している事です。

その為に伝統芸術である斗栱(ときょう)と呼ばれる木造芸術、そして斗栱を生かすデザインに秘密はあります。

斗栱と呼ばれる木造芸術

斗栱とは、柱の最上部または軸部の上に設置し、軒桁を支える部位の事をいいます。

基本構造は、斗(ます)と呼ばれる部品、そして肘木(ひじき)と呼ばれる部品によって構成されます。

これを刎ね木で重ね、作ることで斗栱を再現し、日本の伝統技術を再現したスタイルを実現しました。

自然と同調したように感じるアーバンデザイン

建築の仕上げ材として、外観及び内観を木造に見せかけた仕上げを施しております。

鉄骨部分を木材の仕上げを使う事で、自然感を強く出し、森に溶け込ませる事が目的です。

こうした自然との一体化、そして宙へ浮く建造物、この芸術性により地域文化の活性化を狙いました。

また、斗栱という伝統技術にしてつくられる全体はまさしく木の組積造と言えるべきもので、軸組形式では得られる事がない存在感と抽象性を醸し出しせています。

この組積の構図によって物性、技術、情報、歴史と、全てにおきノンヒエラルキーな建築へとなっています。

最後に

特殊な構造体、そして独特な建築技術によって生み出された木橋ミュージアム。

まさしく、雲の上のギャラリーとして申し分のない建築物です。

そして、この建築工事によって生み出されたやじろべえ刎橋という工法や、江戸時代から存在した刎橋工法。

日本の木造建築として伝統である斗栱。

日本の文化を取り入れた建築物といえるでしょう。

こうした芸術性、歴史のある建造物が増えていくといいですね。