中小企業が取り組むべき効果的なAI開発とは?

AI技術の急速な発展により、中小企業にとっても新たな可能性が広がっています。

しかし、AI開発に取り組む際には、リソースや予算の限られた状況を考慮に入れなければなりません。

中小企業が効果的なAI開発を実現するためには、どのような戦略が必要でしょうか?

本記事では、中小企業が成功するAIプロジェクトを展開するためのアプローチ方法を経験談を基に解説します。

中小企業のAI開発事情


まず、中小企業のAI開発事情についてみていきましょう。

AIを導入している企業は全体の約3%

経済産業省資料(2020年度 戦略的基盤技術高度化・連携支援事業(中小企業のAI活用促進に関する調査事業)調査報告書)には次の記載がされています。

しかし、実際にAIを導入している中小企業は全体の約3%と、AIは中小企業にとってはとても高いハードルになっています。

経済産業省資料(2020年度 戦略的基盤技術高度化・連携支援事業(中小企業のAI活用促進に関する調査事業)調査報告書)

chatGPTのようなgenAIは、多くの中小企業にとっては根本的な解決にはならない

近年、AIと自然言語処理技術の進化は目覚ましいものがあり、多くの企業がその恩恵を受けています。

行政機関も「ChatGPT」 神奈川の市役所では“全国初”業務導入

しかし、一部の産業、特に製造業のような多額の設備投資を必要とする分野においては、genAIのような新たなテクノロジーが即座の解決策となることは難しい現実があります。

なぜなら、多くの製造業企業は既存の業務プロセスや設備に大規模な投資を行っており、その設備を最大限に活用する必要があるため、新たなテクノロジーを導入するにはコストと時間がかかるからです。

製造業においては製品の品質管理や生産効率の向上が極めて重要であり、これらの要素を確保しながらAIなどの新技術を導入することは容易ではありません。

僕自身がAI開発を始めたきっかけ

僕がAI開発に興味を持ったのは、2年ほど前です。

ちょうど、ものづくり補助金の作文用に「新製品・新サービスの革新的な開発」を考えていた時のことです。

社長の頭の中にしか情報が無い、典型的な中小零細企業

僕自身は2019年の2月から有限会社糸井商会に勤務しています。

糸井商会の業務内容は簡単に言えば、町の鉄筋工事屋さんです。

鉄筋工事というのは建物の基礎や壁を作る工事であり、地元の総合建設会社の1次下請け会社として鉄筋工事を施工するのが主な業務内容です。

建物の基礎に使用される鉄筋は、プラモデルの部品のように多種類の細かい部材を工事現場で一つ一つ組み立てていきます。

組み立てる順番を間違えると完成しないので、現場での経験が非常に重要な業種になります。

入社当時の会社の現状は、ほとんどの書類がアナログで、各工事プロジェクトの粗利率が客観的にわからず、社長の頭の中にしか情報が無いような典型的な中小零細企業でした。

そのため、入社後は営業と既存の業務フローのデータを集めることに時間を費やし、2年ほど経過したあたりからようやく正確な経営状況が把握できるようになってきました。

会社の現状が少しずつ把握できて来たので、現状に見合った目標を立て、その手段として新しい設備を入れたり、人事制度を作成したりしました。

本来であれば、人員を変更して有能な人員を新しく募集して、有能な人員に高いインセンティブを与えるのが適切だと思います。

しかし、現在の会社に従事している人員は、現在の社長を慕って従事している方がほとんどで、僕の裁量では人員を変更することが難しく、会社の粗利率を向上させるには、現状の人員の生産性を向上させるような手段を取る必要がありました。

そのため、国の補助金を使用した設備投資を数回実施し、AIを活用した手段も模索してきました。

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AIを使えば、償却の終わった機械を活用しながら生産性を向上できるかもしれない

設備投資をする場合は、最先端すぎる設備だと現状の人員が使いこなせない為(新しい機械がもったいなくて使えないと言う人員もいました)、機械の稼働率が下落して粗利が落ちるという不思議な現象が発生する場合があります。

しかし、AIという手段の場合、既存の人員が使い慣れた設備に外付けする形で導入できるので、低コスト且つ低リスクに課題を解決することができると知りました。

そのため現在は、もっと(糸井商会で)AIで業務改善できることはないのかと模索している最中であり、これがAI開発を始めたきっかけになります。

ただ、やはり中小企業の中に効率よくAIを組み込むのは容易なことではないでしょう。

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なぜわざわざ自社でAI開発をする必要があるのか?

中小企業の中では、「永遠の課題」が発生している

商工会議所のプレゼンの時に、製造業の中小企業の経営者の方と話す機会があり、プレゼン会場でヒアリングを行いました。

「単なる最先端の設備投資の場合、既存人員では扱うことができない」

「人為的なミス(角度、数)による仕損や不良品が多いが、永遠の課題になってしまっている」

このような悩みを抱えている中小企業は弊社以外にも意外にいるのだなと感じました。

企業内で発生している細かなミスは、認知されているものの、どう対処していけばよいのかわからなかったり、人為的なミスなので仕方なく受け入れてしまっているケースが多いようでした。

弊社の例でいえば、鉄筋の本数のカウントミスによって生じるコストは、人件費(加工費、本数のミスによって生じる余計な人件費など)、車両費など年間で70万円程度発生していました。

鉄筋の本数の自動カウント機能が搭載されている最先端の設備は1000万以上の設備投資になります。

販路拡大を見据えた設備投資であれば、キャッシュフローを踏まえても適切な設備投資になる可能性はありますが、人員を変更できない制限の中では計画した通りの機械の稼働率を確保できるかどうかのリスクは高くなります。

このように、中小企業の中では、設備投資をするまでではなく、認知はしていても解決できない課題が一定数発生していると考えます。

イメージとすれば、弊社の例のように年間1~2百万前後のミスが大半かと思います。

AIによる部資材(鉄筋)の個数カウントについて課題から開発手順まで解説!

一般的なAIツールでは中小企業の課題を解決しにくい

開発ソフトの提供の場合、物体の本数の検知を実行することは可能なのですが、企業によって撮像環境は様々であるため、AIを導入しても精度よく機能しないことが大半です。

物体検知AIを例にとれば、工場の天井の有無、撮影対象のサビや気候による光の加減、導入しているカメラなどによってAIの精度が変わってくるため、課題を解決するための精度を出そうとすると、既存のソフトを提供するだけでは解決に至らないことが多いです。

課題を解決できるような高精度のAIを開発するには、各企業環境に合わせた画像の収集と運用が必要であり、開発ソフトの提供としてしまうとその修正に多額のコストが発生してしまいます。

画像の収集と精度の運用を自社でできるようなソフトを開発すれば良いのかもしれませんが、その運用フロー(AI導入段階の設計、検証、実装・運用)が可能なのであれば自社内にAI人材を育成する方が低コストで済みます。

低コストで課題を解決するには開発ソフトの提供ではなくAI人材育成したうえで、変動的に外部のベンダーを使用する方が適していると考えます。

AI人材を育成することは低コストでその会社の単純作業や技能のバラツキを解消することにつながる

また、企業の中にAI人材を育成することは、長期的に業務全体の改善を促すことにもつながると考えます。

「今回は本数のカウントをAIでやってみたけど、角度の検知もできるのではないか?」

「危険個所に立ち入ることを防ぐには人の顔を検知してアラームが鳴るようにすればいいのでは?」

「手書きの経理作業にも応用ができるのでは?」

などと改善案を着想・提案し、各企業に合わせたAIを開発できる人材を育成することが、人材不足の解消のための長期的な低コスト対策につながると考えています。

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まとめ

中小企業にAIを導入するのは容易なことではありません。

市販のAIツールを導入したとしても、思ったような効果が出ず、根本的な課題解決にはつながらないでしょう。

製造業など設備投資が大きくなる産業では、AIを開発できる人材をじっくり育成することが人材不足の解消のための長期的な低コスト対策につながると考えます。

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