【レオパレス大量施工不良】問題点と原因、建物の影響について解説

賃貸アパート大手の株式会社レオパレス21は2018年4月に界壁施工の不備が発覚し大きな問題となりました。その後も施工不良となる箇所が確認され、アパートのオーナーや居住者に転居など急な要請を受けることが起きています。

設計図書とは異なる施工がされていたことは建築業界の問題として非常に考えていかなければいけないことです。この記事ではレオパレス21が起こした施工不良の問題と原因、建物の影響などをお伝えします。

レオパレスのアパートに大量の施工不良が発覚

レオパレスは2018年4月に界壁施工の不備が指摘され問題が発覚しました。

4月27日レオパレスは対象物件の確認調査を行い、建築確認通知図書に記載される小屋裏の界壁が施工されていないことが判明します。

2018年5月29日には図面と施工マニュアルが一貫しない不備を確認、界壁施工において建築基準法にふれる可能性が高まりました。

2019年2月7日、新たに1324棟の物件で壁や天井などに施工不良が見つかります。同年7月12日には267棟の共同住宅に耐火構造または準耐火構造の界壁が不適合であり、消防法または火災予防条例の基準に違反する恐れがあると報告されました。

施工不良の発覚により入居者やオーナーへの転居や対応を要請され、現在問題解決及び再発防止の取り組みがされています。

レオパレスが起こした大量の施工不良

レオパレスの施工不良は一つだけではなく複数あります。こちらでは問題となったレオパレスの施工不良をお伝えしていきます。

小屋裏界壁が施工されていない

界壁は延焼防止用に設ける仕切り壁です。建築基準法に定める防火、遮音の性能を満たし、小屋裏、天井裏まで達するように設ける必要がありますが、小屋裏界壁の施工がされていませんでした。

設計図書に反する界壁内部充填材

界壁内部の断熱材が設計図書上ではグラスウールが充填されるものとして記載されていましたが、実際は発砲ウレタン(硬質ポリウレタンフォーム)が充填されていました。

これにより建築基準法による共同住宅の界壁に求められる遮音性の基準値を満たしていない可能性があることが確認されています。以下に界壁の不備の疑いがある物件と施工棟数の表を記します。

物件 施工棟数 発砲ウレタンパネル

施工棟数

界壁不備
ゴールドレジデンス 1,660棟 563棟 563棟
ニューゴールドレジデンス 679棟 326棟 225棟
ヴィラアルタ 153棟 52棟
合計 2,492棟 941棟 788棟

引用:界壁・外壁に不備発生の疑いがある最大棟数

大臣認定不適合となる外壁構成

建築基準法では共同住宅の外壁において準耐火構造または防火構造の仕様が求められていますが、対象となる物件の外壁は設計図書に記載された仕様ではない施工がされていました。

申請図書では外壁サイディングの下地は屋外側で606mm間隔以下、屋内で約455mm間隔の仕上げとなっていますが、実際は屋外、屋内共に下地間隔が広く下地不足となる施工がされていました。

耐火性能の基準を満たさない天井施工

天井施工の仕上げについて3階建て共同住宅の天井に求められる準耐火構造の告示仕様ではない施工がされていました。

一部の物件において設計図書に記載される部材を組み合わせて2枚張りとする告示仕様ではなく、実際は1枚張りとなっている場合や、2枚張りではあるものの定められた部材が組み合わさっていない場合があることが確認されています。

これにより建築基準法が定めている耐火性能の基準を満たしていないという判断がされています。

界壁の耐火構造仕様の不適合​

建築基準法第27条および第61条において、耐火構造の界壁とすることが求められていたにもかかわらず、設計図書に記載された国土交通大臣認定に定める仕様に適合しない施工がされていました。これにより法令違反が疑われています。

鉄骨造の耐火建築物の界壁部分は、強化石膏ボード(網入り)の二重張りなど国土交通大臣に定める仕様が求められますが、種類や厚みの異なる石膏ボードが使用されていて、国土交通大臣に定める仕様との不適合が確認されています。

レオパレスが起こした施工不良の原因

ここまでレオパレスが起こしてしまった施工不良についてご紹介しましたが、ここではなぜ施工不良が起きてしまったのかをご紹介していきます。

小屋裏界壁が施工されていない原因

現在で想定している小屋裏界壁が施行されていない原因は以下が考えられます。

  • 図面と施工マニュアルの整合性の不備
  • 社内検査体制の不備

物件の更新が頻繁に行われていたことで建物の仕様が分かりにくくなっていたこと、施工業者に渡していた図面やマニュアルに一貫性がなく不備があったことを原因として確認がされています。

また、検査は行っていたものの図面などと現場との照合確認が不十分であったと報告があります。検査内容は自主検査に留まっており、社内検査体制に不十分だったとされています。

界壁内部充填材の違いが起きた原因

昭和45年建設省告示第1827号によって界壁の断熱材がグラスウールまたはロックウールと定められていました。

界壁内部の充填材の違いが起きた原因は、発砲ウレタン(硬質ポリウレタンフォーム)の方が断熱性能や価格が上位素材のため告示に適合すると誤認していたことと考えられています。

大臣認定不適合となる外壁構成の不備が起きた原因

大臣認定では外壁サイディングの下地間隔と固定方法が屋外側、屋内側で指定されていました。しかし、設計部署と発注部署との情報共有が不十分となっていたため、大臣認定とは異なる仕様で施行されていたことが原因と報告があります。

施工不良によって不安視される建物の影響

界壁の施工不備は防火上の耐火性能が低下している可能性があります。また、界壁が設けられていないため遮音性が低下し、生活音が伝わりやすくなっている影響が考えられます。

今回の界壁の不備において、建物全体の構造体力に影響を与えるものではないとされていますが、界壁が耐力壁に該当する場合は建物の強度に影響が出るでしょう。

レオパレス施工不良にみる建築業界の問題

設計図書の記載とは異なる施工も部門ごとの情報が共有されていないこと、商品のバージョンアップによる仕様変更のすべてを把握できておらず、整合性のない図面とマニュアルが施工現場にまで及んでしまったことが問題です。

現場も建材が大量に搬入され、施工会社は指示されるまま現場で組み立てていたのではないかとされています。施工の段階で施工業者も違法性を感じながらも馴れ合いがあった可能性も考えられるでしょう。

このような問題が再発しないように設計図書や仕様書から調査を行い、不正がどこで行われていたのかを明らかにしていくことが大事です。

レオパレス施工不良問題-2020年9月30日時点の改修進捗状況-

施工物件の改修工事の進捗状況を以下の表に記載します。

シリーズ 全棟数 明らかな不備棟数 明らかな不備棟総戸数 要改修など 改修完了
ネイル・6シリーズ 15,283 7,641 120,243 104,839 38,571
その他のシリーズ 23,802 5,983 96,023 90,402 2,405
合計 39,085 13,624 216,266 195,241 40,976

引用:株式会社レオパレス21 改修等の進捗状況について

施工不備による対応は特定行政庁と協議を行いながらレオパレスの費用負担と責任において実施されています。尚、再発防止と工事進捗状況については随時公表しています。

まとめ

ここまでレオパレスの施工不良の問題や原因、影響についてお伝えしました。

施工不良の問題で挙げられていたのは、仕様の誤認や更新される仕様を把握できていないこと、部門ごとの情報共有ができていないこととされていますが、その他にも現場間での対応にも問題があったのではないかと指摘されています。

建物はそこに住む人の命を守る場所であるため、基準に満たさない施工を許してしまうのは絶対に起きてはならないことです。

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