AI導入が難しいのはなぜ?AI推進に必要な3つの力

AIは産業だけではなく、個人の生活にも深く根付いています。

生活の一部となり、気づかないうちにAIを使っている生活になってきています。

では少しずつ生活に入り込んできているAIは、建設業ではどのような活用をされているのでしょうか。

この記事では、まず建設業の現状、AIを利活用する目的、今後の課題についてご紹介し、なぜAI導入が難しいとされているのか詳しく説明していきます。

【2025年問題】建設業の現状

まずは建設業の現状を確認し、なぜAIの利活用が必要になってきているのか確認しましょう。

就業者数の減少・就労者の高齢化

建設業では就業者数の減少・就労者の高齢化が深刻に進行しています。

そのため、人材確保が困難になり、若年入職者の確保と、技能承継が喫緊の課題になっています。

2002年に約40,000人であった就業者数は、2016年には約21,000人と半減しています。

近年、外国人実習生の引き受け人数は増加していますが、技能をスムーズに承継させるシステムを持っていなければ会社の付加価値は上がりません。

若手の技能労働者を確保し、熟練の技能士の技術を長期的に働いてくれる若手技能士へスムーズに承継させることが、一人当たりの労働生産性の向上と競争力の強化につながるのですが、

実際は技能の承継がうまく進んでいないのが現状です。

施工時期が平準化できていない

国土交通省直轄工事では、繁忙期と閑散期が明確に分かれています。

具体的には、各地域の発注者協議会などで情報を共有しながら連携を図り、4月から6月までの閑散期と繁忙期の仕事量の平準化を図ろうとしています。

しかし、人材不足な上に施工ピークも重複し局所的な人手不足が発生しているのが現状です。

AI利活用の目的


建設業の人材不足を解消するため、最先端の設備やAIを利活用が推進されています。

ドローンを用いた点検作業の効率化の例

出典:国土交通省

ドローンを用いた点検作業の例を見ていきましょう。

具体的には、インフラの点検画像をドローンなどのロボットを使用し効率化を図ります。

例えば、画像データからひび割れを検知し、ひび割れ幅が0.4㎜以上の時にアラートする、等です。

国交省ではインフラ分野でのAI活用の流れをさらに加速すべく「AI開発支援プラットフォームの開設準備ワーキング・グループ」を設けました。

国交省 AI開発支援プラットフォームの開設準備ワーキング・グループについて

インフラ事業者が土木技術者の正しい判断による「教師データ」を国が整備・提供することで、民間や研究者が技術開発に用いるプラットフォームを作成する取り組みです。

オープンデータ化がされることで、AIが建設現場まで利活用されることが期待されています。

AI活用の課題 AIが難しいのはなぜ?

戦略的基盤技術高度化・連携支援事業(中小企業のAI活用促進に関する調査事業)

建設業では人材不足が深刻化しており、どうにかしてこの問題を解消しなければなりません。

この問題を解決する案の1つとしてAIが期待されていますが、経産省が公開している資料(戦略的基盤技術高度化・連携支援事業(中小企業のAI活用促進に関する調査事業))によれば、中小企業のAI普及率はたった3%にも満たないのが現状です。

実際に商工会議所の中小企業の経営者の方々は「AIは難しい」「AIはよくわからない」といった感想を持っています。

なぜAIは難しいのでしょうか?AIを利活用するにはどのような課題があるのでしょうか?

AIの推進には3つの力を持った人材が必要 2000人に1人

AIの利活用には3つの力を持った人材が不可欠です。

その3つの力とは、1.データエンジニアリング2.課題解決能力3.データサイエンスの3つです。

この3つの力をすべて持っている人材は、現在の日本の大企業でもおそらく2000人に1人程度しかいない超貴重な人材になります。

当然中小企業にはほとんど存在しないことになります。

詳しく見ていきましょう。

データエンジニアリング データ処理技術を実装する力

1つ目はデータエンジニアリングの能力です。

データエンジニアリングとは、膨大なデータを分析するためにデータの整理や管理を行ったり、複雑で大規模なデータが活用できるよう情報基盤の構築や運用を行うことを言います。

厚労省 データエンジニア

私たちが普段目から入手している情報はすべて数字で表現されます。

例えば、写真であれば高さ、幅、そしてRGB(赤、緑、青)の3つ次元で表現され、色の濃淡は0~255までの256段階の数字で表現されます。

目に入る情報だけでもものすごい大量のデータ(数字)があり、そのすべてのデータを管理するには膨大な時間が必要になります。

データエンジニアリングとは、膨大なデータを収集したうえで、そのデータを活用するために整理・管理を行うことが主な役割になります。

中小企業の場合、このデータを収集するという行動自体が抜け落ちている場合がほとんどなので、AI導入が困難という状況にあるのだと考えられます。

自身の経験を踏まえても、せいぜい大雑把な作業日報のデータ収集をやっていれば優秀な方かと思います。

課題解決能力  課題を設定し解決する力

2つ目は課題解決能力です。

現状把握と目標が設定できていなければ、課題を設定することはできません。

大企業であれば上記のデータエンジニアリングの力を有している人材が存在しているので、正確なデータの収集と現状把握が可能になります。

現状把握ができれば見合った年間目標を設定することができ、期末の決算で反省会や改善案を含めた修正を実施することが可能でしょう。

しかし、中小企業の場合は現状把握がまず不可能なのです。

建設業であれば工事毎の粗利が何%なのか?期末の仕掛工事高はいくらなのか?固定費を考慮して目標粗利率をいくらに設定すれば良いのか?そのためにどのような設備投資が必要になるのか….etc

現状を正確に把握している中小企業はほとんど存在しないでしょう。

データサイエンス 統計機械学習の知識を行使する力


3つ目はデータサイエンスの能力です。

データサイエンスとは、統計学や機械学習の知識を自在に操る能力を指します。

機械学習では収集したデータは行列もしくはテンソル(行列の集まり)で処理します。

使用するライブラリの中身およびAIモデルやプログラミングコードの内容を読み解くことは高度な大学の数学の知識を必要とするため非常に難易度が高くなります。

現在ではノーコードで使用できるAIサービスも多く発表されており、すでに学習されたAIモデルを直感的なAPIを通して気軽にAIを利活用できることが多くなりました。

例えば人の顔の検知や車や猫の分類等であれば、わざわざ自身で考えなくても市販のAIサービスを使用して簡単に使用することができます。

しかし、実務の問題をAIで解決する際にはどうしても自分でデータを準備し、学習、推論させることが必須になります。

自己データを使用して機械学習を実施するにはデータサイエンスの能力が必要となるのです。

建設業では画像認識AIを利活用するのが主流

AI推進には上記の3つの力を持った人材が必要になります。

建設業では、このような人材を中心に「画像認識AI」の利活用が主流になりつつあります。

どのような内容なのか具体例をご紹介します。

建設現場の安全管理

画像認識AI技術により、安全管理の自動化を実現。

例えば、立入禁止エリアへの侵入を検知したり、機械や車両と人が接触しそうになったときにアラームを出したり、人物の転倒を監視カメラから検知したりする。また、作業時間以外に不審者が侵入したときにアラームを出す。

設備点検の品質向上・効率化

建設時には、部品等が正しく取り付けられているかの確認の作業がある。

また、既設の建造物は、コンクリートのひび割れやサビの有無など多くの点検項目がある。こういった建造物の設備点検に関わる作業は、一部自動化が進められているなかでも、その作業の複雑さなどから汎用的な検査ツールで対応できないものが多くある。

その場合、作業員のスキルに依存するため、作業の品質を一定以上に保つのが困難であったり、作業自体が属人化されてしまったりすることがある。

画像認識AI技術により、作業の自動化を実現。

例えば、部品の取り付け、コンクリートのひび割れ・腐食、部品のサビ・傷、水漏れなど、従来は人が目視で確認・検査していたものを、AIが正常/異常判定をしたり、異常の種類ごとに分類する。

建機自動化の実現

少子化による労働人口の減少に伴い、建設作業の効率性向上が求められている。

また、建機を扱う熟練技術者の高齢化が進み、建機自動化のニーズも高まっている。

建機の自動化開発支援サービスにより、これまで人が操作していた建機(建設機械)・産業機械を自動化。

技術の伝承と維持

建設作業の一部は、作業員のなかでも熟練者にしかできないケースがある。

一方で、ベテラン作業員の引退などにより、その技術を伝承・維持する必要がある。

画像認識AI技術により、技術の伝承のサポートや作業の自動化を実現。例えば、ベテラン作業員の言語化しにくい技術を記録・可視化する。

まとめ

この記事では、まず建設業の現状、AIを利活用する目的、今後の課題についてご紹介し、AI推進に必要な3つの力について詳しく説明しました。

建設業では画像認識AIを利活用することが主流になりつつあり、画像認識AIの具体例を紹介しました。

人材不足が深刻な中小企業ではAIの利活用が不可欠になってきています。

てつまぐでは画像認識AIの開発方法も詳しく紹介しているのでぜひ確認してみてください。

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