【鉄筋工事】壁式鉄筋コンクリート造について【壁式構造】

S造やRC造について説明している書籍は多数存在していますが、壁式鉄筋コンクリート造について詳細な説明を記載している書籍はほとんど存在しません。

また、言葉だけ羅列した説明をしているサイトが非常に多く、言葉の意味や実際のイメージをしっかり説明しているサイトは非常に少ないため、僕自身非常に苦労した経験があります。

壁式鉄筋コンクリート造に特有の壁梁や端部補強筋についてしっかり理解できているでしょうか?

この記事では、壁式鉄筋コンクリート造について詳しく説明していきます。

壁式鉄筋コンクリート造の建物について

まずは、壁式構造と壁式鉄筋コンクリート造の言葉の意味についてみていきましょう。

壁式構造とは壁やスラブなどの面材によって構成される構造のこと

一般的なRC造には柱や梁が存在し、それらの部材は適切な定着を確保して一体的な構造になります。

柱や梁が剛接合(ラーメン)して構成される構造をラーメン構造といいます。

一方で、壁式構造には柱が存在しない為、柱に応力を伝達させる役割を持つ一般的な梁も存在しません。

柱や梁ではなく、壁やスラブなどの面材によって構成される構造を壁式構造といいます。

壁式構造の建築構造をもち、且つ壁やスラブ等を構成する部材が適切な定着を取り、一体式構造になっているものを壁式鉄筋コンクリート造といいます。

ポイント

・壁式構造とは壁やスラブなどの面材によって構成される構造のこと

・一体式構造とは現場で型枠を組み、コンクリートを流し込んで構造部材が一体化している構造のこと

・壁式鉄筋コンクリート造とは壁式構造の建築構造をもち、且つ壁やスラブ等を構成する部材が適切な定着を取り、一体式構造になっているもの

複数の内部空間を広く使用でき、耐火性に優れるため老人ホームや病院に適用される

鉄筋工事における壁とは耐力壁を指します。

壁式鉄筋コンクリート造には一般的な柱や梁が存在しないかわりに耐力壁が多く存在しています。

耐力壁によって広い空間を複数の小部屋に分けることができ、耐火性に優れるRC造の特性を持っているため、老人ホームや病院などに広く適用される構造になっています。

壁式鉄筋コンクリート造の特徴について

壁式鉄筋コンクリート造には一般的な柱と梁が存在していません。

この部分について詳しく解説していきます。

耐力壁

鉄筋工事の基本は構造部材同士が適切な定着を取ることで一体化することです。

一般的なRC造の場合は柱や梁、スラブが適切な定着を取ることで一体化する構造になっています。

しかし、壁式鉄筋コンクリート造の場合は柱が存在しない代わりに、壁に多くの鉄筋が配置され、スラブと適切な定着を取ることで一体化します。

「壁柱」は間違い!耐力壁の端部には端部補強筋が配置される

壁式鉄筋コンクリート造には柱は存在しません。

ただ、壁が交差する部分や壁の端部の鉄筋を太くしたり、鉄筋の本数を増やすことがよくあります。

壁柱という説明をしているサイトがありますが、壁柱という言葉はありません。

「耐力壁の端部補強筋」が正しい表現方法です。

そもそも帯筋が存在しないので柱ではありません。

確かに、画像だけみると端部の鉄筋だけが太くて柱が存在しているかのように見えますが、壁式鉄筋コンクリート造では「耐力壁の端部補強筋」が正しい表現なので言葉の使い方に注意しましょう。

壁梁が存在する

壁式鉄筋コンクリート造には壁梁という特殊な構造部材が存在します。

壁の上端部などの大きい応力がかかる部分には梁の構造をした配筋がされます。

一般的にはダブル配筋の壁と壁梁の納まりは図のようになります。

先組み、丘組み、陸組みは全て同じ意味

一般的に壁梁は違う場所で先に配筋し、配筋したものをクレーンで吊りこんで設置します。

(画像は現場の都合上梁が下向きになっていますが、通常は上向きです)

このようにあらかじめ配筋をしたものをクレーンで吊りこむことを「先組み(さきぐみ)」といいます。

「丘組み(おかぐみ)」や「陸組み(りくぐみ、おかぐみ)」といった異なる言い方がありますが、意味は全て同じです。

ただし、全ての壁梁を先組みで配筋するわけではなく、型枠業者さんや足場業者さんと打合せをしながら先組する箇所を決めていきます。

ポイント

壁柱ではなく壁の端部補強筋が正しい

壁梁は基本的には先組みで配筋する

壁式コンクリートの鉄筋工事について

壁式鉄筋コンクリートの基本が理解できたところで、具体的な配筋方法を見ていきましょう。

両面断熱型枠工法の場合は縦筋が正確に配筋することがポイント

両面断熱型枠工法の場合、両面断熱の型枠と一緒に壁の横筋が先に配筋されます。

壁の縦筋は型枠と横筋が組み終わった後に上から挿入しますが、横筋の位置が悪いと縦筋が途中で引っかかって正確に配筋することができません。

特に両面断熱型枠工法などの型枠を脱型しない工法を採用する場合は、縦筋が正確に配筋されているかの配筋検査が非常に重要になります。

縦筋を正確に配筋するためには、型枠業者さんや足場業者さんと綿密に打合せをする必要があります。

配筋順序の決定 他業種の方と細かい打合せが必要


壁式鉄筋コンクリートの型枠は上記の画像のような両面断熱型枠の場合と在来工法の場合があります。

壁梁や壁の種類も多く配筋も細かくなるので、横筋や縦筋などの鉄筋材料や型枠材料、足場材の置き場所などを事前に綿密な打ち合わせないと効率の良い施工ができません。

キープランを事前に用意して効率の良い施工を目指しましょう。

まとめ

この記事では、壁式鉄筋コンクリート造について詳しく解説しました。

用語を正しく理解して使用しなければ現場で専門工事業者とコミュニケーションをとることができません。

壁梁や端部補強筋についてよく理解しておきましょう。