大規模言語モデルを使用した技能ギャップの解消について

人材不足は多くの企業にとって深刻な問題となっています。

特に中小企業では、人材不足や技術継承の問題が生産性の低下を招き、競争力を損なう要因となっています。

これらの課題に対して、大規模言語モデル(LLM)を活用することで、新たな解決策が見いだされています。

本記事では、鉄筋工事の事例をもとに、LLMを使用した技能ギャップの解消方法について解説します。

技能ギャップの解消とは?

まず、中小企業で問題になっている技能ギャップについて解説します。

技能ギャップとは熟練者と若手の経験の差

鉄筋工事業では上図のように、鉄筋を使用した建物の基礎を組み立てる業務を行っています。

この組立作業には現場経験が必要であり、熟練者と若手技能者には大きな技能の差(技能ギャップ)が存在します。

図の左に示されているような基礎を、日本語もわからない技能実習生が瞬時に理解して組み立てることは不可能であり、このような特殊な技能をchatGPTに聞いても適切な回答を得ることはできません。

建設業だけではなくあらゆる業界で技能ギャップが課題になっている

このように技能ギャップが大きく存在しているのは建設業だけではありません。

ホテル事業者の場合、それぞれの地区特有の条例やホテル周辺のおすすめのレストラン、過去に発生した顧客との対応成功事例などの業務ナレッジが大量になればなるほど、適切な情報を取得するコストは大きくなります。

LLMを活用して技能ギャップを解消しよう!

大規模言語モデル(LLM)は、大量のテキストデータを学習し、自然言語の理解と生成を行うAI技術です。

これにより、人間の言語を理解し、質問に対する適切な回答を生成することが可能になります。

では、具体的にどのようにLLMを活用すれば良いのか解説します。

RAG活用chatのアーキテクチャー

技能ギャップの解消策となり得るのがRAGとLLMの言語モデルを使った社内のドキュメントなどの検索を容易にするベースシステムの開発です。

リトリーバル拡張生成(RAG)は、LLMの性能をさらに高めるための技術です。

RAGは、ユーザーの質問に対して、関連する文書から必要な情報を取得し、それをもとに回答を生成します。

これにより、業務に特化した知識を持つLLMを構築することができます。

中小企業の大きな課題として、社内に溜まっているデータを簡単に取り出せるようにすることが挙げられますが、データ入力などの付加価値の低い単純作業を自動化させる必要があります。

しかし、現在すでに提供されているツールでは会社独自の手書きの文章や個々の環境全てに対応することはできません。

社内情報のデータ化が進まないと熟練者と若手の技能ギャップの解消が遅れ、技能継承がスムーズにすすみません。

その結果、生産性が低迷し、教育時に発生するコミュニケーションコストが大きくなってしまします。

FAXやスキャンした資料などのアナログな資料に記載されている文字情報や表データを正確に読みとり、Excelなどのテーブルデータへ変換するAIの開発も同時並行で行うと良いでしょう。

LLMとRAGを活用し、ユーザーが簡単に情報を取り出せるようにデータベース化します。

この開発によって、ドメイン知識の少ない若手であっても、専門的な質問に対して、精度の高い回答や情報の要約情報を効率的に引き出すことができるようになります。

通常のchatGPTは法人では使用してはダメ!Azureを使用しよう!

通常のchatGPTには大きく2つの問題があります。

1つ目は、カットオフの日が設定されていることです。

カットオフの日を過ぎると、新しい情報や変更が反映されません。

2つ目は、ウェブデータ以外の情報源を用いた応答ができないことです。

ウェブデータに依存しない情報は提供できません。

社内の機密情報を用いたチャットシステムを開発する際には、セキュリティやデータの保護を強化するためにAzureを利用しましょう。

まとめ

今後、糸井商会ではさらにDX推進を進め、他の中小企業にもLLMを活用した技能ギャップ解消の取り組みを展開する予定です。

また、Udemyなどのオンライン講座を通じて、LLMの活用方法を広めていく計画ですので、ぜひご期待ください!